「電脳メガネ元年」

電脳メガネサミットとMGOS


先週末の8月4日、福井県鯖江市で開催された「さばえIT推進フォーラム “電脳メガネサミット 〜近未来のメガネを語る〜”」に夏休みを使って行ってきました。

電脳メガネサミット

鯖江市は日本のメガネの殆どを生産するメガネの街として知られています。このイベントは現在開発が進んでいる「頭に付けるコンピュータ」、いわゆる「電脳メガネ」の現在と未来を語るという趣旨のシンポジウムでした。普及しつつあるデバイスどころか、まだカテゴリが立ち上がってすらいないものを取り上げるという、市が主催するイベントとしてはちょっと類を見ないほど先進的な題材だと思いますw。

ゲストも、「電脳メガネ」という名前やメガネ型コンピュータの概念を一躍有名にしたアニメ「電脳コイル」のプロデューサーや、エプソンMOVERIOの開発担当者さんなど架空・現実の電脳メガネにまつわる面々、また電脳メガネのアプリケーションアイデアコンテスト参加者らによる聞き応え十分な話が聞けて、はるばる行ったかいがありました。また、ゲストのみならず来場者も、懇親会で話した場ではかなり濃い面々が揃っていて、文字通り時間を忘れて話しこむほどでした。

と、全体的にとても面白いイベントだったのですが、話が展開していく中であれっ?と思った点もありました。それを抱えて会場ホールから出てきた際、地元のテレビ局に感想を求められたのですが、その場で考えをまとめきる事ができず結局コメントは辞退してしまいました。

その後、他の方の感想ツイートなども読みながらもう少し考えてみましたが、何に違和感を感じたのかまとめておこうと思います。

電脳メガネ=ハードウェアの問題?

MOVERIOのロック画面具体的には、電脳メガネ実現への課題が「通常の眼鏡は数十g程度だが、電脳メガネはまだ数百gと重い」「大きくて不恰好」など、ハードウェアの話に終始していたように感じられました。

それらハードの問題はもちろんそれぞれ重要な課題で、まさに鯖江の眼鏡に関する技術や職人芸の腕の見せ所です。しかし、電脳メガネにとって最大の問題はむしろソフトウェアやユーザインタフェース(UI)・ユーザ体験(UX)、そしてOSなのでは?と思い、それについて質問してはみましたが、「それもあるね」程度の扱いで、あまり突っ込んだ話は聞けませんでした。

アイデアコンテストに寄せられたアイデアは面白そうで、聞いていてワクワクするようなものが沢山ありました。ただ、それらを実験デバイスではなく常用できる製品として実際に実装し、更には単発の製品ではなく生態系の一要素として展開・普及させられるためには、まずそのアイデアを実装できるためのプラットフォームが存在することが前提です。

その為には、まずは現行のスマートフォンでやれている行動を満足にメガネでも出来るように、ユーザ側に向けてはハード・ソフトの統合的なUXを、開発者側に向けてはSDK/APIの設計を整備する方が先決だと思うのです。それにはUXのハードウェア面を実現するための物理的なものづくりの技術も必要ですが、UXのソフトウェア面や、開発者向けの環境を実現するための全く異なった技能もまた非常に重要になってきます。

MGOSを作る

Google Project Glass UIモックアップ過去、人とコンピュータのインタラクションのパラダイムが変わった際には、その新しいパラダイムを最初から前提とした新しいOSが産まれ、そのOSを核とした生態系が発生する事がありました。

「ウィンドウ・アイコン・メニュー・ポインタ」ベースのGUIが登場した際にはMac OSとWindows、モバイルタッチスクリーンUIの際にはiOSやAndroidが、それぞれ新たに普及したOSとして登場してきました。同様に、ヘッズアップディスプレイ(HUD)やARといったパラダイムが受け入れられるためには、HUDやARを活用する事をはじめから前提としたUI/UXを持つ新しいOSを作らなければならないのではないでしょうか。

実際、近未来で展開する「電脳コイル」の劇中登場人物たちのメガネ上で動いていたのはWindowsでもAndroidでもなく、架空のメガネ用OS「MGOS」でした。劇中の電脳メガネのハードウェアとしての祖先となるようなデバイスは現在徐々に登場しつつありますが、MGOSの祖先となるようなOSについては、少なくともあまり聞いたことがありません。

このOS(あるいはそれに値するソフトウェア基盤)をどうやって作るか?どのようなものを作るか?といった議論があまりされていなかったという点が、おそらく感じた違和感の核なのだろうと思います。UI/UX基盤を作る、OSを作る、果ては生態系を作るということは、電脳メガネのハードウェアを作るのにも匹敵する壮大なプロジェクトで、一昼夜でできることでは無いだけに余計に。

メガネの時代をもたらすのは誰になるのか

個人的には、電脳メガネをはじめとしたウェアラブルコンピュータの時代の到来はそう遠くないと思っています。ですが、それをもたらすのが誰になるのか、というのは分かりません。
正確な文を覚えていないのですが、電脳メガネサミットの中では「日本発の電脳メガネを」といった趣旨の発言がありました。また、鯖江市長さんのブログエントリには、以下のようにあります。

微細な情報機器をめがねに組み込める技術力、優れた掛け心地を実現するノウハウを持つ産地は、世界で唯一ここ鯖江にしかありません。

世界に先駆けて「めがねの電脳化」に産地をあげて取り組むことは、「産地再生の一つの鍵」になります。

この記述だけを読むと、ソフトウェア・UI・OSといった部分が言及されていないようにも受け取れてしまうのですが、杞憂であることを祈っています。

勿論、自分でそれを作る試みに取り組んでもいない癖に偉そうに、と言われるとぐうの音も出ないのですが…orz

ひとまずは出来ることから、手持ちのMOVERIOで色々実験してみようかな、と調べているところです。

オヤジとデンスケ

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