DAN A4-SFXのグラフィックカードをRadeon RX 6800にアップグレードした際にハマった点メモ

VR用途に力不足を感じてきたため、メインのデスクトップPCのグラフィックカードをEVGA GeForce GTX 1070 SC GAMINGからRadeon RX 6800 (リファレンス版)に換装しました。起動しない問題に当たるなど一筋縄で行かなかったので記録を残します。

TLDR: A4-SFXに入り切るサイズでVRAMが多くて排熱が遮られないカードがRX 6800 (リファレンス)くらいしか無い。起動しなくて色々いじってみたが原因は問題報告の多いライザーケーブルやマザーボードではなく、プラグイン電源の接触不良。

カード選定: A4-SFXに入り切るのは

僕のPCはDAN Cases A4-SFXというスモールフォームファクター(SFF)ケースを使っています。7.2リットルという超小型筐体の中にフルサイズ長のグラフィックカードを搭載できるという特徴があり、2017年にクラウドファンディングで入手してから愛用しています。

が、肝心なのはフルサイズ「長」という点で、厚さは2スロットまでしか入りません。一方で2020年後半から出てきた世代のグラフィックカードは長さだけでなく厚さの方向にも巨大化が進んできており、AIBパートナーからのカードは多くが2.6スロット2.9スロット、果ては3スロット超えととんでもない分厚さになっています。これではA4-SFXに入れた時に蓋が閉まりません。

リファレンスやFounders Editionのカードはかろうじて2スロットの体裁を保っていますが、GeForce RTX 3000シリーズのFounders版カードはフロースルーファンという、排熱をカードの裏に貫通させる特殊な排熱構造によりこれを実現しています。一方、A4-SFXはそのサイズを実現するため、マザーボードと電源ユニットの真裏にグラフィックカードを配置する、いわゆるサンドイッチケースと呼ばれるレイアウトを取っています。つまりフロースルーファンの出口が内壁にぶち当たってしまうため吸い込んだ風の逃げ道が無く、設計上意図した冷却が出来ません。

一応ZOTAC GeForce RTX 3070 Twin Edgeあたりはフロースルー構造を持たずに2スロットを実現しているのですが、3070や3060TiはVRAMが8GBとこれまで使っていたGTX 1070と同量であり、VRChatの重量級イベント用ワールド等において8GBを使い切ってしまった事例に遭遇したことがあると心許ないと言わざるを得ません。RTX 3060はVRAMが12GBと多めですが、純粋な性能も出来れば妥協したくありません。考えた結果、Radeon RX 6800のリファレンス版が消去法で残りました。2スロットで、フロースルー構造ではなく、RTX 3070と同クラスの性能で、VRAMが16GBと大容量。全部満たせるのはこれくらいしかありません。

PCI Express Gen 4とライザーケーブル

今世代あたりからグラフィックカードはPCI Express Gen 4 (PCIe 4.0)に移行を進めています。前述の通りA4-SFXはグラフィックカードをマザーボードの裏に配置する仕組みですが、このためにPCIeライザーケーブルを使います。最近、ライザーケーブルを使うSFFケースユーザーの間で、ケーブル自体もGen 4に対応していないと不安定になったり起動しなかったりするという報告がネットに挙げられています。A4-SFXはv4.1リビジョンからはPCIe Gen 4対応のライザーケーブルが付属していますが、僕の手元の個体は初代のv1のためGen 3対応止まりです。まあそもそもマザーボードもGen 3しか対応してないし、Gen 3モードで動作しても誤差程度しか性能は下がらないようなので、気にはしつつもまあ動かなかったらライザーケーブル交換すりゃいけるっしょ…とかこの時は思っていました。

動かない。トラブルシューティング

いざ手元にRadeon RX 6800が届き、まずは普通にGTX 1070を外して代わりに挿してみましたが…起動せず。クラッシュもエラーもPOSTもなしでそもそも画面が全く出ません。カード上の赤いRadeonロゴは光ってるので通電はしてるようですが。別のデスクトップPCのスロットに直接挿してみたところ、問題なく動作。事前にライザーケーブルの問題の事は聞いていたので、あーやっぱりケーブル替えなきゃ駄目かーと思ってLINKUP Ultra PCIe 4.0 X16ライザーケーブル (23cm, リバースGPUソケット)を購入。商品画像の対応表を見たところ20cmの両端リバースでもいいみたいです。

ライザーケーブル換装。右上に見えるのが交換前のGen 3対応ライザーケーブル

で、ケースに付属してきたライザーケーブルと交換して動かしてみたところ…起動せず。手元の別のグラフィックカード(GeForce 8400 GS, GeForce GTX 970)を挿した場合は問題なし。むしろRX 6800の場合はライザーを省いてスロットに直接挿しても起動しません。なんで?もしやマザーボードとの相性が悪い?

今使ってるマザーボードはBIOSTAR X370GTN。2017年発売の、史上初のMini-ITX AM4マザーボードで、当時A4-SFXでRyzen機を組もうと思ったらこれしか選択肢がありませんでした。チップセットがX370と古い事もありPrecision Boost Overdriveは使えない、BIOSで細かい調整がしづらい、Wi-FiもBluetoothも非搭載…等々不満が溜まってきてはいたので、相性問題を疑うついでに最新世代のマザーに換装してしまおう、と半ば勢いでGIGABYTE B550I AORUS PRO AXをポチー。

意外な場所からの解決

左: BIOSTAR X370GTN、右: GIGABYTE B550I AORUS PRO AX

翌日新マザーボードが届き、CPU・RAM・コネクタ各種を移植。(このB550I AORUS PRO AX、M.2スロットのネジがわかりにくかったです。最初から固定されているナットをペンチか何かで外してから、ネジ穴→M.2 SSD→ナット→ヒートシンク→ネジの順に挟む、というのが正しい手順。)

さて改めてRX 6800を挿してみたところ…起動せず。やっぱりライザー経由でも直挿しでも動きません。えええええそれでもダメなの!?何でーー!!と更にググり回っていたところ、どこかの掲示板にて「8ピン補助電源コネクタの接触不良だったよ」という人を見つけ、半信半疑ながらも電源ケーブルを確認してみます。

あったよ原因。このPCではSilverstone SX600-Gというプラグイン式のSFX電源ユニットを使っているのですが、よく見たら補助電源ケーブルの電源ユニット側のコネクタの中でモレックスピンが奥まで届かない位置にズレており、通電しない状態になっていました。指でケーブルをコネクタに押し込み、他のピンと並ぶ位置まで押し戻して再度試してみたら…起動。電源接触不良だったか!!

なんだマザーボード買い換える必要なかったじゃん…下手するとライザーケーブルさえも…。まあいいや、PCIe Gen 4活用できるしPBOも使えるしWi-Fi 6もBluetoothも内蔵だし2.5GbEもついてるし(ネットワーク関連はそもそも対応機材が無いけど)

しかしこれまでGTX 1070 (補助電源8ピン×1)では問題なく動いており、グラフィックカードを差し替えてみても検証用の8400 GS (補助電源不使用)やGTX 970 (6ピン×2)では顕在化せず、今回の8ピン×2の時だけ影響が出るのは盲点でした…。以前にもグラフィックカードがうんともすんとも言わない時は電源周りを疑えという事例は遭遇した事あったのに……PCIe Gen 4のほうで問題が多く報告されてる方に気を取られて見落とすとは。迂闊。

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